繊維とマスク

マスクって

 

コロナウイルスのパンデミックで俄然注目を浴びたのがマスクです。

 

本来、マスクは顔を覆うものです。これはさまざまな国や文化でかなり昔からあったのではないかと思われます。mask という単語で英語として記録があるのは16世紀に入ってですが 1、それ以前のフランス語やイタリア語、さらに中世ラテン語などにさかのぼるようです。アラビア語の似たような発音の単語も起源のひとつだろうと言われています。

1.https://www.merriam-webster.com/dictionary/mask

 

このように諸説あるのですが、中世ラテン語のmascus(仮面、幽霊といった意味)や中世ラテン語のmaschaから来ているという説だとそのおおもとの意味は魔女や魔法使いという意味ともつながるそうです 2。

2.https://en.wiktionary.org/wiki/masca#Latin

 

やはり顔を隠すというのは、何かしら不気味な印象を与えていたのかもしれません。

 

また、シェークスピアの『ロメオとジュリエット』では、ロメオがキャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込んで初めてジュリエットに会います。

 

キャピュレット家とモンタギュー家はお互いに憎しみ合っている家柄ですから、本来ならモンタギュー家のロメオがキャピュレット家令嬢のジュリエットに会うこともなかったはずです。二人が出会ったのもマスクのお蔭。もっともこれは目の周りを隠すような仮面としてのマスクです。

 

 

衛生マスクとは?

 

このように「仮面」という意味合いでのマスクもあるのですが、最近、話題のマスクはやはり鼻や口を覆う衛生マスクですね。

 

実は衛生マスクの歴史は仮面としてのマスクに比べるとずっと新しいものです。

 

日本での衛生マスクの誕生は明治から大正時代のようですが、当初は防塵用のマスクでした。これは真鍮(しんちゅう)の金網に布を貼り付けたものです。主として工場で使われていたものです。

 

衛生マスクが病気予防に使われるようになったのは1918年のインフルエンザ(スペイン風邪)大流行がきっかけでした。1923年、内山武商店が「壽マスク」(ことぶきマスク)というものを発売、これが評判になったようです 3。

3.一般社団法人 日本衛生材料工業連合会「マスクの歴史について」http://www.jhpia.or.jp/product/mask/mask3.html

 

おそらく当時でもいろいろなマスクがあったものだと思いますが、あるテレビ番組では、当時の黒マスクが紹介されていました 4。これはマスク全体としては黒い布でできていてその口から鼻の部分に金属繊維が張られているものです。金属繊維で殺菌しようという発想なのではないかと思います。

 

4.テレビ朝日ニュース(2018.11.20)

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000141252.html

 

当時は、「恐るべし!ハヤリカゼのバイキン!」などといったキャッチコピーが使われていたようです。なお、スペイン風邪では世界中で数千万人以上が亡くなっています。

 

 

昔もあった黒マスク

(上村松園『青眉』(せいび)1934年・天童市美術館蔵)

 

なお、なぜ黒マスクだったのかは不明ですが、和装の場合、掛け襟というものがあります。上の絵にも描かれていますが、襟の辺りが黒い布になっている和服姿を浮世絵などでも見かけることがあります。

 

これは本来、襟の辺りが汚れがちなので付け替えられるようにした襟です。汚れが目立たないように黒繻子という黒色の繻子(しゅす)が多く使われていました。

 

私の想像ですが、黒マスクでも同じように汚れが目立ちにくいという発想があったか、あるいは黒繻子の布が手に入りやすかったかで黒繻子が使われたのではないでしょうか。

 

なお、上の絵が描かれた1934(昭和9)年にもインフルエンザが流行し、マスクが再び流行しました。その後、布地にはガーゼが使われるようになるなどしていきました。おそらくそういう流れを経てマスクと言えば白マスクが普通になっていったものだと思われます。

 

 

衛生マスクでウイルスなどをキャッチできるのか?

 

一見地味なマスクですが、さまざまな改良が施されています。まず、1973年に不織布製プリーツ型の原型が日本でつくられています 5。マスクにプリーツを入れることで口周辺とのフィット感を高めたものです。

 

5.一般社団法人 日本衛生材料工業連合会「マスクの歴史について」

 

その後、日本での花粉症の流行とともに、家庭用としては、平型マスク、プリーツ型マスクや立体マスクがつくられるようになっています。

 

マスクの場合、フィルターとしてガーゼを重ねたものや不織布が多く使われています。

 

これは呼吸ができるようにしつつ粉塵や細菌、花粉、ウイルスなどを捕捉できるようにするためです。

 

ここで、細菌というのはだいたい1ミクロン前後の生物です。1ミクロンは千分の1ミリです。花粉は数十ミクロンです。PM2.5というのは2.5ミクロン以下の微粒子ですが、大体は1ミクロン程度以上のものです。

 

つまり、おおざっぱに言うと

細菌<PM2.5<花粉

という感じになります。

 

しかし、ウイルスはもっと小さいのです。だいたい細菌の数十分の1程度の大きさです。そうすると、これを食い止めつつ呼吸ができるようにするというのはかなり困難なことです。

 

 

衛生マスクでウイルスなどをキャッチする方法

 

そこで使われている方法のひとつが静電気です。

 

静電気というと、冬場のパチっとするイヤな奴です。ただ、下敷きで髪の毛を吊り上げて遊んだ経験のある方もいると思います。

 

細かい理由はなかなか難しいのですが、電気を通さない物質は、ぶつかったりこすったりすると結構簡単に帯電します。つまり、静電気を帯びるのです。

 

そんなわけでウイルスも静電気を帯びています。そこで、マスクのフィルターに使う不織布などを逆に帯電させておくと、フィルターの中の繊維の間に隙間が大きく空いていてもウイルスたちがぴたっと繊維にくっついてしまいます。

 

すべてではありませんが、最近のマスクではこのように静電気も使われています。

 

 

まとめ

 

嫌なウイルスや花粉、これを食い止めているのも実はほとんどが繊維です。コロナウイルスのニュースでも、マスクは話題になっても繊維が話題になることは少ないでしょう。でも、まさに縁の下の力持ち・繊維が活躍していることをたまには思い出してくださいね。

 

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