『糸の撚り(より)』について

「糸の撚り」や「撚糸(ねんし)」という言葉を聞かれたことはありますか?

一般的に、糸は「撚られた繊維の束」でできています。

※釣り糸のように、1本だけの繊維でできている糸は「モノフィラメント」といいます。

1本から複数本の糸を引きそろえ、ねじり合わせる事を「糸を撚る」と言い、その糸に撚りをかける工程を「撚糸工程」と言います。

<下撚り(したより)と上撚り(うわより)>

全く撚りがかかっていない1本または複数本の糸に最初の撚りをかける事を「下撚り」と言い、この下撚りした糸を2本以上合わせて、下撚りと反対方向に撚りをかける事を

「上撚り」または「諸撚り(もろより)」と言います。下撚りと反対方向に上撚りをかける事で、撚りが安定し、丈夫な糸になるのです(上撚りをかけず、一方方向にだけ撚った状態を「片撚り」と言います)。

 

一般的に合糸数を表す場合は、下撚りの本数を前に、上撚りの本数を後にします。例えば、4x3とか8x2と書き表し、それぞれ4本3子(よんほんみこ)、8本2子(はちほんにこ)と呼びます。

 

<S撚り と Z撚り>
まず、無撚(むねん)S撚り と Z撚り での3つをご覧ください。

まったく撚られていない無撚の糸はバラバラになってしまうので、このままで織ったり

編んだりする事はできません。

撚りには、右撚りのS撚り、左撚りのZ撚りの2つの向きがあります。

「S」「Z」はなにかの頭文字ではなく写真のようにアルファベットの形から来ています。

 

一本の糸のみで作られた単糸(たんし)は、基本的にZ撚りです。

※ちなみに、世の中にはZ撚りが多いです。例えば、DNAの大多数、標準的なロープ、

ボルト(ねじ)はZ撚りです。理髪店のサインボードもカタツムリも。

なぜ多いのかには諸説ありますが「人口の約90%が右利きであるため」が有力です。

右利きが縄を撚る時、斜線を描く時、ボルトを回す時、右回り(=左撚り)が比較的容易であるからかもしれません。DNAとカタツムリは不明ですが。

 

ただ「手縫い糸・ミシン糸」では、見分けやすいように、手縫い糸はS撚り、ミシン糸はZ撚りが一般的です。

※手縫いでもミシン縫いでも、縫製しているうちに自然と縫い糸に撚りがかかります。

縫製時に、糸の撚りと逆方向に撚りがかかると、縫い糸の撚りが戻り、ミシンでは「糸切れ」や「目飛び」、手縫いでは「ちりつき」や「もつれ」の原因となります。

 

<甘撚り(あまより)と強撚(きょうねん)>

撚りの度合い(回転数)によって、甘撚り・普通撚り・強撚に分けられます。

・甘撚り:撚った糸と糸の間に空気が入り隙間ができますので、ソフト感があります。ニットの糸やタオルの糸に使われることが多いです。

・強撚:手触りが固く強度を増します。吸水・速乾性が向上し、クレープ生地等、清涼感に優れ、夏場に適した衣料に使われます。

 

<撚りの特性を活かした生地に>

細糸と太糸、撚りの異なる複数の糸を組み合わせ、撚り方を工夫した糸を「意匠撚糸

(いしょうねんし)」または「変り糸」「ファンシーヤーン」と呼び、生地に様々な表情を出せます。例として、下記の丸昌産業㈱のホームページをご覧ください。

https://kawariito.com/変糸について/意匠撚糸

 

<撚糸機>

ご興味ある方は、一例として、下記の綾羽工業㈱のホームページをご覧ください。

https://industry.ayaha.co.jp/pro_tec/index.html

 

<仮撚加工(かりよりかこう)について>

最後になりましたが、当社のファイバー部門および関係会社では、国内ストッキング生産の約70%のシェアで原料販売し、ナイロン糸等の仮撚加工を提携工場で行っています。

その加工について紹介します。

仮撚加工は、主にポリエステル、ナイロンの長繊維に嵩高性(かさだかせい⇒バルキー性、ボリューム、ふんわり感)を持たせるために、 一旦撚りを掛けた糸に熱を加え、また撚りを戻す工程を連続で行う加工です。
仮に撚りを加え、後で戻すことから仮撚と呼ばれます。

※ちなみに、復縁等に使われる人間関係は「縒り(より)を戻す」で同義語です。

<加工の目的>

1・バルキー性の向上(嵩高性)

2・製織性(せいしょくせい)・製編性(せいへんせい)の向上

製織性とは織物にしやすい性質、製編成とは編み物にしやすい性質を意味します。

3・染色性の向上

スピンドル(図中真中部分)が回転することによって、上下逆方向の撚りが同数入ります。 糸を上から下へ走らせながらスピンドルを回すと、加撚部分で撚りが入り、 解撚部分で

撚りが戻り第一ローラーからは無撚りの糸が出てきます。

 

以上、概略ですが「糸の撚り」について紹介しました。

生地や衣料製品を企画する際、この「糸の撚り」を考慮するのは重要です。なぜなら、撚り方によって、糸・生地の強度、肌触りや風合いに大きく影響するからです。

普段 着ている衣服も、実は糸を撚るところから「こだわって」できているものがあるはずです。

「糸の撚り」を知る事で、普段見ている生地や着ている服の糸にまで興味を持っていただければ幸いです。