2020.10.06
先日、ある会社との商談で「マイクロファイバー」や「割繊糸(かっせんし)」「原着糸(げんちゃくし)」の用語が出て、聞き慣れない方も居られると思いましたので、説明します。
マイクロファイバーとは、化学的に組成された8㎛(マイクロメートル:髪の毛の約1/100の太さ)以下の極細のナイロンやポリエステル等の繊維で、吸水速乾性や通気性・保温性を持たせた素材です。
その機能性からスポーツウェアや下着に多く用いられ、またその繊維断面が鋭角や多角形の形状であることを活かして、メガネ拭き等の拭き取りクロスにも用いられています。
<マイクロファイバーの生い立ち>
「マイクロファイバー」という用語が日本で普及し始めたのは、2000年代前半からと言われています。その頃、類似品・模倣品を含め、海外から大量に日本に「手軽な雑巾用途」として輸入され、100円均一やホームセンターに普及しました。
しかし、このマイクロファイバーは1977年に日本が初めて市場に出した糸でした。
1970年代の後半に人工スウェード(フランス語 suède:合成皮革の一種)の開発を目的として合繊メーカー各社が開発に取組みました。人工スウェードの質感を出すためには、繊維を極細にする必要がありますが、始めから極細で作ろうとすると強度が持たず、糸として成り立たず、困難を極めました。
そこで開発されたのが「作った糸をバラバラにする」製造方法で、「割繊糸(英語ではSplit Yarn)」、マイクロファイバーの誕生でした。
『割繊糸って?』
割繊糸の説明には、その製法から知っていただくのが早いと思います。
極細繊維の製法には、下図のように様々ありますが、「複合紡糸」にて割繊糸が作られます。
一例として、その製法からの命名の「海島型(シーアイランド型)」は上の前後図のように、
紡糸段階で、海と島を構成する複数のポリマー(高分子化合物:ポリエステル等)から、
通常の太さの糸を作り、アルカリ処理にて、海成分を溶解除去し、極細繊維となる島成分を残す製法です。
割繊糸とは、溶ける繊維と溶けない繊維とが混ざった混繊糸(こんせんし)のことです。
例えば、溶けない繊維がポリエステルであった場合、空気が入った極細繊維の束となるため、シワになりにくく、柔らかい風合いと、染色時には深みのある発色性が生み出されます。
※下の写真は、その紡糸ノズルです。
『原着糸って?』
原着糸とは「原液着色糸」の略で、ポリエステル等の化学繊維の生産時、原材料を溶かす
段階で顔料インクを入れ、着色を行って、あらかじめ色を付けた化学繊維のことです。
(英語では、Moped YarnやSpun-Dyed Yarn等)
通常、白や生成の糸を染料に漬け込んで着色する糸は、製造時に染料や、すすいだ水が廃液となるため、環境負荷が大きいだけでなく、摩擦によって色が落ちることがあります。
しかし原着糸の場合、繊維と顔料が一体化しているため、摩擦や日光による退色が少なく、
染色の手間がないため、少ないエネルギーで作れる、環境負荷が少ない色糸として注目されています。
以上、「マイクロファイバー」「割繊糸」「原着糸」について、説明しましたが、それらは
海外でも調達可能です。
しかしその中には、低価格にこだわるがための「模倣品」も多く、本来の価値が希薄になった物もあるようです。
この説明をしながら、日本生まれのマイクロファイバー等、「ジャパンクオリティ」を、
あらためて見直した次第です。
毛玉を取って、衣類を生き返らせよう!
衣装も楽しめる劇団四季の魅力